□催事と売場の「やんごとなき」関係⑥…「土用丑の日編」
「土用」とは、季節の変わり目である立春、立夏、立秋、立冬を迎える前の
約18日間のことを指します。「土用丑の日」はこの期間にある「丑の日」という
意味です。そのため「丑の日」が1回の年もあれば、2回ある年(二の丑といいます)
もあります。今では夏の土用だけが広く浸透しています。
土用は季節の変わり目のため、体調を崩しやすい時期です。中でも夏は、暑さに
よる夏バテや食欲不振等により、体調を崩しやすくなります。また、昔は冷蔵庫も
ありませんから雑菌が繁殖しやすく、疫病が流行りやすい時期でもありました。
そこで諸説ある中の一つが、本来冬が旬のうなぎは、夏に売れずに困っていた
鰻屋が、江戸時代を代表する学者である平賀源内に相談したところ、店頭に「今日
はうなぎの日です」という張り紙で宣伝するようにアドバイスされたとのこと。
当時「『う』のつく食べ物を食べると夏バテしない」という民間信仰が広まって
いたこともあり、大盛況したそうです。それが土用丑の日にうなぎを食べる風習
として定着したとされています。
「クリスマス」や「ハロウィン」を広め、定着させたのは小売業者ですが、江戸
の昔から消費者を引き付ける「広告」の手法が用いられていたというのは驚きです。
最近はめっきり高くなったうなぎですが、やはり「土用丑の日」くらいはうなぎ
が食べたいという方が多くいらっしゃいます。さすがに昨今は店頭で焼きたてうな
ぎの販売は減少傾向ですが、あの匂いを嗅ぐと日本人なら食欲を掻き立てられる人
も多いのではないでしょうか。
「土用丑の日」の売場作りは、水産部門の独壇場です。うなぎかば焼き、白焼、
ハーフカット、串焼き、うなぎ肝串などなど。うな丼に合わせて農産部門はお吸い
物に欠かせない三つ葉やネギ、日配品では付け合わせの茶わん蒸しを、惣菜では
うな重にうな丼、う巻き、うなぎの入ったお寿司など、うなぎ関連品で売場が
にぎわいます。うなぎもマグロのように完全養殖が商業ベースに乗り、夏の風物詩
が残り続けることを願ってやみません。