□「教わる」と「学ぶ」?
学生や社会人を問わず、学校や組織の中で教育の一環としていろいろなことを
「教わる」機会は多いと思います。私も組織の中で長く従業員教育に携わってき
ました。様々な研修やカリキュラムを行う中で「教える側」と「教わる側」の関
係について、いつも悩んでいました。
組織の教育の流れは大体において、まず集合研修で組織の全体像や使命、各部署
部門の役割等についてレクチャーや実習があり、その後各部署に配属されたのち、
OJTという形で先輩や上司から実務教育を受けることが一般的です。
「教える側」は「今日は○○について話をするぞ」と思って臨みますし、「教
わる側」は「今日はどんな話があるのだろう」と思いながら研修に参加されるので
はないでしょうか。
私の経験では「教えたこと(つもりも含めて)」の9割は記憶にすら残っていない
ものです。そのときには一生懸命聞いているのですが。それはなぜかというと「教
わる側」が「受け身」だからです。興味関心があることもないことも含めて話を聞
く訳ですが、自分が「本当に知りたい」という意識で臨んでいる方は多くはありま
せん。そもそも人間の脳は「受け身」の話を長く記憶できるようになっていない
のです。ですので、テストでもない限り「受け身」の話はすぐ忘れてしまいます。
一方で、配属先で先輩や上司から受ける実務教育は意識が違います。なぜなら、
明日から自分が実際にやらなければならないことばかりだからです。このときに
姿勢は「教わる」ではなく「学ぶ」に変わっています。聞いたことを自分の言葉
に変換して理解しようとしますから、記憶する前に「思考」という回路で整理さ
れます。そしてわからないことは聞いて確かめることで、更に理解が高まり、より
鮮明に記憶されます。ここが「教わる」と「学ぶ」の決定的な違いではないかと
思います。
余談ですが、私は子供を勉強好きにするには「アウトプットを増やす」ことが
大切でと感じています。学校で習ったこと、自分が知った知識等を家族の前、友達
の前、親戚の前等で発表させます。そこではみんな褒めてくれます。子供は褒めら
れると嬉しいので、更にインプットを増やそうと考えます。学校の勉強だけでなく、
図書館で自分で調べたり、先生に聞いたり、ネットで調べたり、どんどん探求心が
芽生えます。そしてまた人前で発表することを繰り返すことで、完全に「学びのサ
イクル」が出来上がります。残念なことにある一定の年齢以上になると邪念や優先
順位、興味関心が変わってくるので、この方法は通用しなくなりますが…