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□ディズニーリゾートから学ぶ③ ~魔法をかけ続ける~  

 ディズニーリゾートでは、ミッキーやキャストの人は満面の笑みで迎えて

くれますが、それは殆どの場合、子供に対してです。その眩しいばかりの笑

顔や身振り、アクションによって子供たちは「おとぎの国」に来たことを実

感し、のめりこんでいきます。一番魔法にかかってほしい人に魔法をかける

のだと思います。子供が喜ぶと大人も悪い気はしませんし、子供がまた行き

たいと言えば、そんなに喜ぶのならまた連れて行こうと考えるものです。

 パークを歩いていると、ふとある疑問が生まれました。ミッキーやキャス

トたちは交代制で入れ替わっているはずなのに、どこで入れ替わっているの

かわからないのです。皆さん、いつも元気ハツラツなのです。関西にあるテ

ーマパークでは、疲れて足取りの重いキャストの方が通用口に向かって歩い

ている姿を何度も目にしましたが、ディズニーリゾートでは一度もそんな姿

を見たことがないからです。

 もうひとつ、パーク内のレストランや売店はいつも大賑わいなのに、商品

を搬入するデリバリーの車を見たことがありません。店舗にはそれほど多く

の在庫をストックできるようにも見えなかったので、これも不思議でした。

   この謎は東日本大震災の影響でディズニーリゾートから帰れない、いわゆ

帰宅困難者が出た時のニュースを見て、謎が解けました。普段、一般の人

は立ち入ることができない「地下通路」に帰宅困難者を誘導し、毛布や飲み

物等を渡している画像でした。キャストの交代も商品のデリバリーもすべて

パークの地下にある通路を通って行われていたのです。このことを知った時

は、本当に驚きました。疲れたキャストも商品のデリバリーも私たちの「日

常」の象徴的な存在です。パークは「おとぎの国」であり、そこに「日常」

的なものかあるとゲストは「魔法から覚める」ので、敢えて見えないように

していたのです。

   これと同じことが、パークを巡回している清掃員(カストーディアル)の方に

も見て取れます。彼らは落ちたゴミを拾う際に決して膝を曲げません。膝を

曲げてゴミを拾うという動作が「日常」的だからです。そのため、膝を曲げ

ずにゴミが拾えるように長い柄の箒とちりとりを持っているそうです。歩き

ながらさっと華麗にゴミを拾う姿はまさに「非日常」の動作といえます。

  「魔法をかけ続ける」=「徹底する」ことは簡単なことではありませんが、

ゲストに「おとぎの国」を満喫してもらうために、そこまでしていることは

驚きを超えて、敬意を表したいとさえ思います。一貫した理想を実現するた

めに「徹底的にこだわる」姿勢が、今日も多くの方に感動を与えているのだ

と思います。