小売業・サービス業好き! 全員集合!94

□見栄えにこだわりすぎると…

 誰しも容姿や見栄えは気になるものです。好みの問題はあるにせよ、

美形に惹かれる人の方が圧倒的に多いのではないでしょうか? ところ

が、これが第一次産業の産品に限って見ると少し困ったことがでてき

ます。どれもピンとまっすぐに伸びたきゅうり、粒のそろったぶどう、

均一な大きさの玉ねぎなど、どれもきれいで形が揃っているものの方が

良く売れます。そんな中に曲がったきゅうりや大きさの不揃いな大根が

混ざっているとどうでしょうか?残念なことに同じ価格ならお客様に選

ばれることは少ないと言えます。

 誰でも少しでもきれいで鮮度の良い商品を買いたいという意識があり

ますので、ピンとまっすぐに伸びたきゅうりの中に曲がったきゅうりが

あれば、まっすぐなきゅうりを選ぶのは当然でしょう。それでは、曲が

ったものばかりのきゅうりしかなく、売場に「無農薬で育てました」と

表示があったとするとどうでしょう? 納得して買われる方が多いのでは

ないでしょうか。前にもお話したように私たちは「常に比較する生き物」

ですので、無意識に良いと思うものを選別しています。私たちに備わった

能力ではあるのですが、生産者の方からみるとどうでしょうか。

 きゅうりを栽培されたことのある方はわかると思いますが、きゅうりを

まっすぐ育てるのは大変なことです。どうしても曲がってしまいます。そ

の時きゅうり農家の方の苦労がよくわかります。それでも曲がったきゅう

りはできますし、大根を同じ大きさにすることは困難を極めます。同じ苦

労をして育ててもまっすぐなきゅうりと曲がったきゅうりでは売れる価格

が異なります。曲がったきゅうりばかりできると収入が激減することにな

るため、農家の方も大変です。

 もし、まっすぐなきゅうりも曲がったきゅうりも同じ価格で売れるなら

ば、農家の方の苦労や生計は大きく変化するかも知れません。生産段階で

の廃棄も少なくなるでしょう。私たちが見栄えにこだわりすぎなければ、

ひょっとして、今より安く購入できることになるかも知れませんね。いず

れにしても商品を購入するときに、生産者の苦労にも少し思いを馳せるこ

とができればと考えています。

小売業・サービス業好き! 全員集合!93

□「エシカル消費」と申しまして…

 エシカル(倫理的な)消費とは、「消費者が各自にとっての社会的課題の解

決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を

行うこと」と定義されています。このことは国連で提唱されている「SDGs

(持続可能な開発目標)」に関連する取り組みと言えます。

 エシカル(倫理的な)と言われてもピンとこないかも知れませんが、地球環

境にやさしい商品や環境負荷削減に取り組んでいる企業の商品を“選んで”購

入することで、持続可能な社会の実現に消費者一人一人が取り組んでいくこ

とと考えれば良いのでしょうか。また、国や人種等の差別のない公平な取引

をすすめる「フェアトレード」によって製造されている商品を購入すること

も、SDGsの考え方に沿ったものと言えるかも知れません。「SDGs(持続可

能な開発目標)」の17の目標は、かなり高いハードルのように思えますが、

私たち一人一人が日常生活の中でちょっと意識したり、協力することで少

しずつ変えられる可能性があることも事実です。

 よく言われることですが、私たちはみな「宇宙船地球号」の乗組員です

から、この星の未来を決めるのは私たち自身ということになります。また

小売業も含めて、事業を行う全ての企業が世の中に必要とされ続けるため

には、持続可能な社会をどうやって実現していくのかという「倫理観」な

しには事業活動ができない時代と言えます。企業はその取り組みを進める

一方で、消費者への情報提供もしっかり行う必要があります。俗にいう取

り組みの「見える化」ですね。 今日の買物はそんなことを少し考えなが

ら、売場と商品を見ていきませんか?

小売業・サービス業好き! 全員集合!92

□サーモンストーリー   

 世界的に魚の水揚げ量の減少が続いています。四方を海に囲まれ、古くか

ら魚食文化が根津いた日本という国に住む私たちにとっても由々しき事態と

います。折しも世界的にヘルシーフードとして魚食にスポットライトが当た

り、日本食ブームでお寿司を中心とした「NAMASAKANA」人気が広がり、

魚価が高騰しています。

 水揚げ高の減少は漁業制限の拡大に繋がり、世界的な魚の取合いの様相に

なっています。このところ日本は、GDP低下、長引いたデフレ経済、先進国

の中では低い収入と物価で、世界の魚市場では日本の「買い負け」が続いて

います。こうなると望みの綱は「養殖」しかないのかもしれません。

 養殖魚の先駆けはなんといっても「鮭(サーモン)」です。古くは南米チリ

で始めた銀鮭やトラウトサーモン(鮭と鱒の交配種)の養殖が有名です。また

ノルウェーフィヨルドを活用した「アトランティックサーモン(大西洋サ

ーモン)」は、鮮度、身質、味、寄生虫がいない等の理由で、一気に日本だ

けでなく、世界の鮭好きを魅了しました。寿司屋の定番にサーモンが入っ

たのもそういう理由からではないでしょうか。

 最近はというと日本でのサーモンの養殖も活況を呈しているようです。養

殖サーモンでは宮城県が有名ですが、鳥取県も一大生産地になっています。

日本で養殖されたサーモンが家庭の食卓に多く上るようになったのは、食糧

自給の面でも嬉しいことですし、「獲る漁業から育てる漁業」への転換が可

能になれば、漁業従事者の確保や育成に繋がる可能性を秘めています。そし

て今盛んに取り組まれているのが、「閉鎖循環式の陸上養殖」です。海上

はなく、陸上で養殖するため、海洋汚染や病気、漁業権の問題等もクリアで

きるのがメリットです。

 休耕田や耕作放棄地の活用や漁業経験者でなくても養殖ができることか

ら、今後の広がりが期待されています。魚食は私たち日本人のDNAであり、

これからも世代を繋いでいきたい食文化でもあります。食に携わる者とし

ては、今後も取り組みを応援していきたいと思います。

小売業・サービス業好き! 全員集合!91

□NB vs PB?    

  お店で品揃えする商品の中にはNB(ナショナルブランド=ネームバリュー

のあるメーカーの商品、コカ・コーラネスレ日清食品等)とPB(プライ

ベートブランド=小売業者が自社製造もしくはメーカーに製造を委託して

作った商品、無印やトップバリュー、セブンプレミアム、コープ商品等)

があります。

 もともとはNB商品があまり強くないカテゴリー(分類)で、品揃えを強化

するためにPB商品が作られてきた経過がありますが、近年は小売りが商品

の良さやこだわりを消費者にアピールすることを念頭に、様々なカテゴリ

ーでPB商品が作られています。小売りにしてみれば、お客様の購買データ

を沢山持っている強みを利用し、お客様が望むと思われる商品仕様や売価

設定を行えるため、PB作りにより力を入れるようになってきました。

 アメリカのスーパーマーケットでは、売場にある商品の8割以上がPB商

品で占められているという企業もあり、さながらPB天国といった感じです。

日本でおなじみのネスレやハインツ等も売場の片隅で細々と品揃えされて

いる有様です。商品的に問題がなく、安いのであればネームバリューに拘

らない気質も相まって、PB商品が店の良し悪しを決めるようです。

 ブランド維持や販売管理費を考えるとPB商品よりNB商品の方が価格は高

くなりがちです。ブランド信仰の強い日本でPB商品がNB商品を凌駕できる

日がくるのか、すべては消費者の意識にかかっているのかも知れませんね。

小売業・サービス業好き! 全員集合!90

□お店もお客様を選ぶ時代?

    スーパーマーケットもドラッグストアもコンビニエンスストアも「オー

バーストア」状態になってきました。品揃えや特売だけで客数を維持する

ことが困難な時代です。新聞の購読数が世帯数の4割を切るようになって

くると、新聞折り込みによる特売も効果が出にくくなっています。かとい

ってアプリや会員限定のメールサービスなども対象者が広がらないと効果

は限定的です。

 似たような店舗がひしめき合う現在では、企業や店舗の「個性」を出

し、それが受け入れられないと継続した利用には結び付きにくくなってい

ます。物価がどんどん上がってくると価格で優位性を保つことも困難です。

これまでの「特売=利益を削って客数を増やす」という構図が描けなくな

ると、コストに見合った販促を考えざるを得なくなります。そうなると玉

子や砂糖といった「赤字企画」の特売品を買いまわるお客様を重視できな

くなってきます。なぜなら、それらの方はお店に対してロイヤリティー

低く、利益率も低いお客様だからです。お店としては、普段から良く利用

していただくお客様をより優先する販促に切り替えていかざるをえません。

 具体的には、普段から良く利用してくださるお客様には特別にお買得品

を用意した招待状を発行したり、特別にポイントプレゼントの企画を打っ

たり、割引券を発行したりといった内容です。わが店のファンのお客様に

「優良顧客(ロイヤルカスタマー)」になっていただき、他の店舗に「浮気」

しないようにしてもらう作戦です。

 「20:80の法則」の項でも書きましたが、2割のお客様が売上高の8割を担

っていることを考えれば、「2割のロイヤルカスタマー」の囲い込みは店舗

にとって死活問題になります。これからは「誰でもウエルカム」の時代では

なくなるかも知れませんね?

小売業・サービス業好き! 全員集合!89

□トイレ掃除に思う

 来日された外国人の方に「自国に持ち帰りたい日本の商品や文化は何

か?」という質問に対して、常に上位に「日本のトイレ」がランクインす

るそうです。「便座が温かい」「水で洗える」「自動で洗浄する」等は

「ありえない」ことのようです。トイレを快適にしたい日本人の意識や

技術が作り上げた文化と言っても過言ではないと思います。

 日本人はトイレの綺麗さや快適性については、かなり「喧しい」国民

ではないかと思います。自宅はもちろん、公衆トイレや公共施設、ショ

ッピングセンター等のトイレについても気にしている方が多いように思

います。

 一方で、トイレを提供する側の意識はどうでしょうか?  お客様アンケ

ートでお店に改善してほしい項目として上位にくるのが「トイレの汚れ」

と「水産部門の臭い」です。お客様の声でも「○○店はトイレが暗くて、

汚れていることが多いから、こっちのお店に来るのよ」という話を耳に

することがあります。お店に置いている商品の鮮度や価格、おいしさよ

りも「トイレの良し悪し」が来店に影響しているとなると、何とかしな

い訳にはいきませんよね。

 トイレ掃除を業者に委託している店舗や自分たちで掃除している店舗

等、様々だと思いますが、掃除の出来栄えについての基準がはっきりし

ない(若しくは無い)と思えてしまうことがよくあります。お客様がこれ

ほど「トイレの良し悪し」を気にしているにも関わらず、トイレの清掃、

維持管理について基準やルールがはっきりしていないというのは、如何

なものかと思えて仕方ありません。ひょっとしたらトイレ掃除を見直す

だけで、客数に変化があるかも知れませんね?!

小売業・サービス業好き! 全員集合!88

□冷凍食品パラダイス?

     スーパーマーケット発祥の地であるアメリカでは、冷凍食品をまとめ買い

してレンジやオープンで温めてそのまま食事に饗することが当たり前という

文化があるようです。「カウチポテト」という言葉があるように、ソファー

に座り込み、一日テレビ等を見ながら過ごす方もいて、そういう方には冷食

やスナックは欠かせないアイテムと言えます。

 私が15年位前にアメリカのスーパーマーケットを視察した際、売場面積も

さることながら、冷凍食品売場の広さにビックリしました。その当時は、冷

凍食品の品揃えと味、価格は競合するスーパーマーケットの差別化になって

いると聞かされて、再びビックリ。その頃の日本のスーパーマーケットの冷

凍食品売場はというと、枝豆やブロッコリー等の冷凍野菜、唐揚げはハンバ

ーグ、冷凍うどん、炒飯、お弁当用の冷凍食品くらいが関の山でした。アメ

リカの冷凍食品売場を見ても、いずれ日本もこんな風に冷凍食品売場が広が

ることはないのではないかと思ったものです。

 ところが、現在はどうでしょうか? 冷凍食品の売場はどんどん拡大され、

アイテム数も増え、まるでお菓子のように毎年様々な商品が開発されては、

淘汰されることを繰り返しています。いままであった定番品に加え、中華、

韓国、アジアン料理や本場イタリアのピザやスイス製のチーズフォンジュ、

フランス産のジビエ料理、はたまた人気のラーメン屋のラーメンまで販売さ

れています。

 特に新型コロナウイルスで外出を自粛したり、リモートワークが定着した

ことも冷凍食品の開発に拍車がかかった原因ではないでしょうか。また技術

革新で小型の急速冷凍機が開発されたことで、今まで冷凍食品を作ることが

出来なかった中小企業でも比較的低コストで製造できるようになったことも、

冷凍食品の裾野を広げています。「有名レストランの味をご家庭で」という

キャッチフレーズのもと、どんどん便利に、より美味しく進化を続ける冷凍

食品に、私たちの胃袋も掴まれっぱなしになるかも?!