□サーモンストーリー
世界的に魚の水揚げ量の減少が続いています。四方を海に囲まれ、古くか
ら魚食文化が根津いた日本という国に住む私たちにとっても由々しき事態と
います。折しも世界的にヘルシーフードとして魚食にスポットライトが当た
り、日本食ブームでお寿司を中心とした「NAMASAKANA」人気が広がり、
魚価が高騰しています。
水揚げ高の減少は漁業制限の拡大に繋がり、世界的な魚の取合いの様相に
なっています。このところ日本は、GDP低下、長引いたデフレ経済、先進国
の中では低い収入と物価で、世界の魚市場では日本の「買い負け」が続いて
います。こうなると望みの綱は「養殖」しかないのかもしれません。
養殖魚の先駆けはなんといっても「鮭(サーモン)」です。古くは南米チリ
で始めた銀鮭やトラウトサーモン(鮭と鱒の交配種)の養殖が有名です。また
ノルウェーのフィヨルドを活用した「アトランティックサーモン(大西洋サ
ーモン)」は、鮮度、身質、味、寄生虫がいない等の理由で、一気に日本だ
けでなく、世界の鮭好きを魅了しました。寿司屋の定番にサーモンが入っ
たのもそういう理由からではないでしょうか。
最近はというと日本でのサーモンの養殖も活況を呈しているようです。養
殖サーモンでは宮城県が有名ですが、鳥取県も一大生産地になっています。
日本で養殖されたサーモンが家庭の食卓に多く上るようになったのは、食糧
自給の面でも嬉しいことですし、「獲る漁業から育てる漁業」への転換が可
能になれば、漁業従事者の確保や育成に繋がる可能性を秘めています。そし
て今盛んに取り組まれているのが、「閉鎖循環式の陸上養殖」です。海上で
はなく、陸上で養殖するため、海洋汚染や病気、漁業権の問題等もクリアで
きるのがメリットです。
休耕田や耕作放棄地の活用や漁業経験者でなくても養殖ができることか
ら、今後の広がりが期待されています。魚食は私たち日本人のDNAであり、
これからも世代を繋いでいきたい食文化でもあります。食に携わる者とし
ては、今後も取り組みを応援していきたいと思います。