□見栄えにこだわりすぎると…
誰しも容姿や見栄えは気になるものです。好みの問題はあるにせよ、
美形に惹かれる人の方が圧倒的に多いのではないでしょうか? ところ
が、これが第一次産業の産品に限って見ると少し困ったことがでてき
ます。どれもピンとまっすぐに伸びたきゅうり、粒のそろったぶどう、
均一な大きさの玉ねぎなど、どれもきれいで形が揃っているものの方が
良く売れます。そんな中に曲がったきゅうりや大きさの不揃いな大根が
混ざっているとどうでしょうか?残念なことに同じ価格ならお客様に選
ばれることは少ないと言えます。
誰でも少しでもきれいで鮮度の良い商品を買いたいという意識があり
ますので、ピンとまっすぐに伸びたきゅうりの中に曲がったきゅうりが
あれば、まっすぐなきゅうりを選ぶのは当然でしょう。それでは、曲が
ったものばかりのきゅうりしかなく、売場に「無農薬で育てました」と
表示があったとするとどうでしょう? 納得して買われる方が多いのでは
ないでしょうか。前にもお話したように私たちは「常に比較する生き物」
ですので、無意識に良いと思うものを選別しています。私たちに備わった
能力ではあるのですが、生産者の方からみるとどうでしょうか。
きゅうりを栽培されたことのある方はわかると思いますが、きゅうりを
まっすぐ育てるのは大変なことです。どうしても曲がってしまいます。そ
の時きゅうり農家の方の苦労がよくわかります。それでも曲がったきゅう
りはできますし、大根を同じ大きさにすることは困難を極めます。同じ苦
労をして育ててもまっすぐなきゅうりと曲がったきゅうりでは売れる価格
が異なります。曲がったきゅうりばかりできると収入が激減することにな
るため、農家の方も大変です。
もし、まっすぐなきゅうりも曲がったきゅうりも同じ価格で売れるなら
ば、農家の方の苦労や生計は大きく変化するかも知れません。生産段階で
の廃棄も少なくなるでしょう。私たちが見栄えにこだわりすぎなければ、
ひょっとして、今より安く購入できることになるかも知れませんね。いず
れにしても商品を購入するときに、生産者の苦労にも少し思いを馳せるこ
とができればと考えています。