小売業・サービス業好き! 全員集合!101

□ノントレー?  

  容器リサイクル法が制定されたことで、食品を乗せているトレーやペット

ボトル等の容器は回収し、リサイクルすることが当たり前になってきまし

た。循環型社会の実現のためには「3つのR」(Reduce:減らす、Reuse:繰り

返し使う、Recycle:再資源化する)は大切ですし、みんなが力を合わせて取

り組む社会が求められていると思います。

 食品スーパーでは、特に畜産部門や惣菜部門でトレーを使わずに商品作

りを行う、いわゆる「ノントレー」商品が増えてきました。鶏肉やミンチ、

コロッケ等の揚げ物など、トレーを使わずに専用袋に入れた商品が広く認

知されてきました。ご家庭でも買って帰った商品のトレーがかさ張って困

るという声も多く、ノントレー商品の利用が増えるにしたがって、売場で

ノントレー商品の占める割合も広がってきました。現在では、ノントレー

専用のオートパッカー(自動包装値付け機)まで開発されており、作業の効

率化も進んでいます。

 それではこれからも、ノントレー商品はどんどん増えていくのかという

と、それはなかなか難しいようです。魚はトレーを使わないと持ちにくく、

ドリップ(肉汁)も出やすくなりますし、お刺身や切身などはノントレーで

は、見栄えが悪く買っていただけないのが現状です。お肉についてもうす

切り肉や焼肉用に切ったお肉等は同じ理由でノントレーは困難です。そう

考えるとノントレー化も限りがあるように思えます。

 昔は買物といえば、近所の八百屋や魚屋、肉屋に行っていました。いず

れも対面販売で、必要なものを必要な量だけ、量り売りでした。購入した

ものは紙やポリ袋に入れて持ち帰っていたことを考えると、昔の生活の方

がよっぽど「Eco」だったと思えてきます。安さと便利さを追求した結果、

実はいつのまにか「振出しに戻る」ことになってはいないでしょうか?

小売業・サービス業好き! 全員集合!100

□教えることの難しさ?   

   人手不足、採用難が叫ばれる中、新たに採用した人はもちろん、今在籍

している人たちのスキルアップやレベルアップを図る上で、教育訓練の重

要性が増しています。今も昔も「教える」ことの難しさは変わりませんが、

働き方や価値観が変化する中で、今までと同じやり方で同じ効果を得るの

は難しくなっていますし、教育の仕方も「個人」に対応しなければいけな

い時代になりました。コロナ禍でリモート勤務も当たり前になると、上司

から部下へ「熱量」の伝え方も変わらざるを得ないようです。

 第2次世界大戦で当時の日本海軍を率いた山本五十六元帥は、教育者とし

ても優れていた方のようです。教育について山本五十六元帥が残した言葉

に「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動か

じ」という有名な言葉があります。子供や部下に教育・指導いるときの要

諦を突いているのではないでしょうか。

  ただ、この言葉に続く言葉があることはあまり知らせていないようです。

その続きの言葉とは…

 「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば人は育たず」

 

 「やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば人は実らず」

 

 というものです。昔の軍隊の総帥の言葉の中に「叱る」という文言が

一切ないばかりか「耳を傾ける」「任せる」「感謝する」「信頼する」と

いう言葉が溢れていることに驚きました。現代でもこういう言葉を発する

上司は多くないと思われます。「人を育てる」ことは、「愛を持って接す

る」ことなのかなと思う、今日この頃です。

小売業・サービス業好き! 全員集合!99

従業員満足度?

  「エンプロイー サティスファクション(Employee Satisfaction)」と言葉を

聞かれたことはありますか?

   日本語では「従業員満足度」と訳されます。従業員が所属する企業にどれ

ほど満足感を持っているかという指標です。一般的に従業員満足度が高い企

業ほど、会社の理念が従業員に浸透しており、従業員同士の協調性や協力体

制も良く、生産性が高い傾向があると言われています。従業員満足度は企業

の大小に関わらず、経営者の方針や従業員を大切にする組織風土に基づく部

分が大きいのではないでしょうか。

 店舗においても店長が替わると店の雰囲気も変わります。店長が何を大事

にしているのか、どういう優先順位で業務に当たっていのかによって、売場

の状態や従業員の働きやすさも変わってきます。私の経験からも、店長が替

わると従業員(多くはパート社員の方)から、いろいろ「懇願」されることが

あります。更衣室の空調の利きが悪いとか、壁に穴が開いているところがあ

るので何とかしてほしいとか、果ては○○さんはよくサボるので注意するよ

うにという「ご忠告」まで。大きいことから小さいことまで。ところが着任

後1ヵ月を過ぎる頃には、そういった「懇願」や「忠告」はパッタリ止まり

ます。要するに従業員にとって店長の「値踏み期間」が終わったのです。

いろいろな意見や忠告に対して、新しい店長はどう対処するのか、みんな

目を皿にして見ているのです。そして従業員の方の淡い期待が裏切られた

(叶わない)とわかると、パッタリ言わなくなるのです。

 私は(特に)女性と仕事をする際に重要な要素として、①環境を整備する、

②正しい手順と目標を伝える(教育する)、③平等に扱う、④気軽に相談で

きる雰囲気、この4要素が重要だと考えています。気持ちの良い環境と正し

い手順で効率よく仕事をしてもらい、力量差はあっても人として平等に扱

うことで、女性の働き方は大きく変わると思っています。(男性にももち

ろん言えますが… )  気持ちよく仕事ができれば、自ずと満足度は高まるの

ではないでしょうか。

小売業・サービス業好き! 全員集合!98

□2:6:2の法則?

  売場のカテゴリー(品種)における品揃えの基準となる考え方を「2:6:2の

法則」と言います。商品の括り(レギュラーコーヒー、ドレッシング等の

コーナー)毎に「アッパー(ハイグレード品)」「ミドル(中心商品)」「バジ

ェット(廉価品)」に分けて商品選定します。その中でアッパー商品を2割、

ミドル商品を6割、バジェット商品を2割の比率で品揃えすることで、買

い易さを演出し、利益ミックスを行います。バイヤーはこの法則をもと

に商品調達を行っています。

 ところで、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが蟻の行進を

眺めていたら先頭を切って良く働く蟻が全体の2割、その蟻に追従して働

く蟻が6割、全く働かない蟻が2割いることを突き止めました。これは「パ

レートの法則」と呼ばれ、経済学や組織論では広く知られています。「蟻

だけでなく、会社組織の中でも同様の傾向がある」という訳です。面白い

のは、全く働かない2割の蟻を取り除くと、今まで働いていた蟻の2割が「

全く働かない蟻に変身」してしまうと言うのです。更に面白いのは、全く

働かない蟻ばかりを集めると、その集団もまた、良く働く蟻が2割、平均

的に働く蟻が6割、全く働かない蟻が2割に分かれ、なんと以前いたグルー

プよりも働き方が良くなる(生産性が上がる)ことがわかったそうです。

私たちの組織の中でも、目を凝らせば違ったものが見えてくるかも知れ

ませんね?

小売業・サービス業好き! 全員集合!97

□天気予報にドキドキ?

 「待ちの商売」である小売業や外食産業等にとって、天気予報は売上を

左右するため、毎日確認することはもちろん、時間帯によっても細かく確

認しています。如何せん、天気によってその日の仕入れや作業量、人の配

置に大きく影響するので、気が気ではありません。特に、「ヤマ日」や

「ハレの日」に天気が悪いと売上の落し幅が大きくなり、リカバリーが困

難になるので大変です。

 現在は天気予報の精度も上がったため、かなりの確率で予め準備ができ

るようになりましたが、それでも台風や爆弾低気圧等は予想が変わること

も多く、肝を冷やすこともあります。私の経験で一番しんどかったのは、

12月30日に大雪が降ったときです。お正月も営業するスーパーマーケット

なら、迎春商品を年始に持ち越してもある程度は売れるのですが、正月3

が日が休みだったため、大量の迎春商品の売り切りに伴う値下げや廃棄が

発生しました。最も稼げるはずの12月の売上と利益が暗転したのを鮮明に

覚えています。

 日本人ほど日常に天気に左右される国民は少ないのではないかと思えて

仕方ありません。アメリカでテーマパークや遊園地に行くと、雨の日でも

ポンチョを被って多くの方が嬉々として歩いていますし、雨が降っている

にも関わらず、ベビーカーに乗っている子どもが爆睡して、親と思わしき

人は子どもを気遣うことなく(そのように見えました…) 次のアトラクショ

ンに移動している姿を見ると、国民性の違いを感じざるを得ませんでした。

小売業・サービス業好き! 全員集合!96

□スーパーウーマン?

   私が携わった仕事の中でスーパーマーケットの各部門の「技術認定試験」

というのがあります。各部門の社員やパートさんの技術習得をすすめ、到

達レベルに応じて「初級・中級・上級」レベルの試験を実施し、合格する

と認定証を発行し、評価するというものです。農産、水産、畜産部門では、

商品の加工や商品作り(刺身や薄切り肉等)、デイリー、グロッサリー部門

では、各種データの登録や削除、棚替えや発注、データ分析等、レジ部門

ではレジ操作やサービスカウンター業務、クレーム対応等の実技と筆記試

験の合計点で評価を行います。

 それぞれの部門の何でも、水産と畜産部門の実技試験は難度が高く、上

級については1度で合格する人は殆どいないくらいの難関でした。そうい

うのも魚の肉の基本から応用まですべて理解し、必要なスキルと力量を身

に着けることで、売場品質のレベルを上げ、お客様にご満足いただきたい

からです。

 ある店舗のパートであるYさんは、最初は水産部門に配属になりました。

持ち前の器さと向上心でメキメキ頭角を現し、高難度な刺身盛合せや姿造

り、鱧の骨切りに至るまでマスターされました。ところがその店舗の水産

部門をテナントにアウトソースすることになり、Yさんは泣く泣く畜産部門

に移りました。Yさんは畜産部門でもスキルを磨き、牛、豚の整形や部位割

り、手切り、スライスに至るまで、超スピードでマスターされました。社

員よりも早く、丁寧な作業でついには水産・畜産の上級試験ダブル合格す

ることができました。正社員でも上級試験ダブル合格した人はいないので、

彼女の偉業がどれほど凄いかがわかります。「お客様に喜んでいただれる

商品を作りたい」との彼女の思いが形になった瞬間です。Yさんの嬉し涙

は今でも忘れることができない思い出です。

小売業・サービス業好き! 全員集合!95

地産地消と言いますが…

 日本の食糧自給率の問題が、定期的にマスコミを賑わせます。ロシアによ

ウクライナ侵攻や異常気象、エネルギー・食糧安全保障等でも食物自給率

をどうすべきかという議論が繰り返されます。当たり前ですが、自国民の食

糧は自国で賄えるのが一番望ましいのですが、日本の国土や一次産業のもつ

課題を考えると一筋縄ではいかないようです。私たちの暮らしの根幹をなす

問題ですから見て見ぬふりはできませんね。

 日本の食糧自給率は37%(令和2年度、エネルギーベース)で、政府は2030

年までに食糧自給率を45%まで引き上げたいとしていますが、一次産業の

生産性向上や飼料・農薬の高騰、後継者問題、農地法の問題(耕作放棄地や

法人利用等)など、取り組まなければならない課題が山積しています。

 私たち消費者も一次産業分野で頑張っている方々に協力できることはな

いでしょうか?  古くから言われていますが「地産地消」を意識して買物を

することで、地域の産業を活性化・安定化できる可能性を持っているそう

です。生産者にしてみれば、地域の方が地元で消費してくれれば、遠くに

運ぶ必要がなくなり、コストダウンが図れますし、畜産分野等では同一地

域内で出産⇒肥育⇒出荷の循環ができたり、地域で作る野菜や穀物を飼料

にできればコストも抑えることができます。また物の移動が少ないことで

二酸化炭素の排出量を減らすことにも繋がります。(フードマイレージとか

カーボン・フット・プリント等と呼ばれています)

 「地産地消」の取り組みで消費者と生産者の繋がりが深まれば、お互いに

安心して生産活動や消費活動ができ、その先に将来展望が開かれるかもし

れませんね。