□「どうでもいい」仕事をしていませんか?
文化人類学者のデヴィット・グレーバー氏はその著書「ブルシット・ジョブ
クソどうでもいい仕事の理論」(岩波書店)で、世の中の仕事の半分は無意味で、
不必要で、ときに有害だと言います。氏によると、こうした仕事は5つの類型に
分類できるそうです。
- 誰かを偉そうに見せるための取り巻き(例=ドアマンや受付係)
- 雇用主のために他人を脅迫したり欺いたりする脅し屋(ロビイストや顧問弁護士)
- 誰かの欠陥を取り繕う尻拭い(バグだらけのコードを修復するプログラマー)
- 誰も真剣に読まないドキュメントを延々とつくる書類穴埋め人(パワーポイントを量産するコンサルタント)
- 人に仕事を割り振るだけのタスクマスター(中間管理職)
賛否両論ありそうな内容ですが、与えられた仕事にブルシット的要素が多いと、
働く人の熱意は低下し、仕事がもたらす「やればできる」という心理学でいう
自己効力感も得られず、世間体のために嫌々働くという、誰も得をしない不幸な
状態が続くことになります。
日本の産業、とりわけ小売業の生産性の低さが指摘されて久しいですが、小売
業の仕事の中にもブルシット的要素が多いのではないかと思います。去年と同じ
企画を繰り返す企画担当者、お客様に尋ねられても「私の担当ではない」とケン
もホロロの売場担当者、店舗の都合や、要不要も考えず大量の情報を店舗に垂れ
流し、挙句の果ては期日までに返信がなかったと文句を言う本部などなど。
誰もがどうすれば気持ちよく働けるのか、お客様に喜んでいただけるのかを
考え、意見が言え、正しく理解してもらえる職場を望んでいますよね。存在して
いる障壁を言葉に変えられるか、その言葉を受け止められるかが問われているよう
な気がします。
ちなみに心理学では、幸福感の高い人はそうでない人に比べて創造性が30%高く、
生産性も31%高いことがわかっているそうです。
(引用:2021年8月30日発行 日本経済新聞より)